■目次
- 壊れたら交換(リプレイス)か、全台交換(リパワリング)か?
- 10年経過したパワコンは経年劣化によりトラブル急増する
- パワコン全台交換のメリット
- 実際にパワコン全台交換してみると、発電量はどう変わるのか
- パワコンの選定における重要なポイント
- 東京電力におけるパワコン交換の手続き
■壊れたら交換(リプレイス)か、全台交換(リパワリング)か?
どちらも太陽光発電所にあるパワコン(パワーコンディショナー)を交換することをさしますが、その目的は異なります。
- リプレイスとは
太陽光発電所の維持や正常運転を目的に、故障した設備を交換すること - リパワリングとは
経年劣化により発電量が低下した太陽光発電設備を新しい設備に交換し、発電効率を向上させること
特にパワコンは、メーカーによると10~15年で寿命とされています。また日々稼働し続けることで経年劣化が進行し、寿命の長短にかかわらず発電効率は徐々に低下していきます。 また、寿命による故障を待って交換(リプレイス)するよりも、経年劣化による発電効率の低下を考慮し、事前に交換(リパワリング)する方が、発電量を安定的に維持できるというメリットがあります。
経済産業省への届出については、太陽光パネル容量とパワコンの合計容量が共に変わらない10kW以上50kW未満の低圧発電所の場合は不要です(設備認定に関して、パワコンの型式等について申請しないため)。
▲ 上に戻る■10年経過したパワコンは経年劣化によりトラブル急増する
太陽光発電システムの中核機器であるパワコンは、直流電力を交流に変換するだけでなく、発電量や電圧の調整、異常検知など重要な役割を担っています。
しかし、一般的なパワコンの寿命は約10~15年程度とされており、導入から10年が経過すると、以下のような経年劣化に伴うリスクが急増します。
また昨今の猛暑において、劣化の進んだパワコンが故障しやすくなり、夏場にパワコンが稼働しなくなるというケースが多発しております。
経年劣化により発生しやすくなるトラブル
- 出力の低下 内部部品の劣化により、発電効率が著しく低下
- 突発的な停止・エラー 基板や冷却ファンなどの故障が原因で頻繁に出力停止
- 通信障害・データ欠損 遠隔監視や発電量の記録に支障が出る可能性
- 絶縁性能の低下 漏電などの重大トラブルにもつながりうる
太陽光発電の稼働開始から10年が経過したパワコンは、劣化により発電量が減少するだけでなく突発的な故障により稼働を停止させます。新しいパワコンと交換して発電効率を取り戻す全台交換がおすすめです。
▲ 上に戻る■パワコン全台交換のメリット
パワコンは太陽光発電における心臓部ともいえる存在であり、安定稼働は発電事業全体の収益性や信頼性に直結します。特に導入から10年を超える機器では、内部部品の劣化や修理対応の困難化といった課題が顕在化しており、壊れてから対応するよりも、予防保全の一環として計画的に全台交換することが、よりスマートな運用の鍵となります。
- 計画的なパワコン交換で安定運用を確保 突発的なトラブルや修理対応に追われるより、一括交換による計画的な更新でダウンタイムを最小化。故障してからの対応だと、故障発生からパワコン修理もしくは新しいパワコンを調達・交換するまでの時間が発生するため、全台交換するよりも停止する期間が長期になる
- 保証・サポートの再確保 古い機種では製造終了により修理部品の供給が難しくなっているケースも。全台更新により、保証期間の再スタートと万全のサポート体制が得られる。メーカーによる10年保証が付いているパワコンの場合、全台交換した時から新たに10年間の保証期間が始まるため、故障したときのリスクが低減できる
- 最新機種による発電効率の向上 新型パワコンは変換効率や制御性能が向上しており、既存設備のポテンシャルを最大限に引き出すことが可能。とりわけ過去10年にわたるパワコン技術の進化は著しく、変換効率の大幅向上や出力抑制への柔軟な対応、遠隔監視との連携強化などのスマート制御に対応した機能が標準装備されている
- 保険適用や監視体制の見直しにも連動 パワコン更新を機に、保険内容の見直しや遠隔監視システムの導入・見直しを同時に行うことで、リスク管理も強化。メーカーによっては遠隔監視サービスを通じて異常検知に対して迅速な対応が可能なことがあり、トラブル拡大の未然防止につながる。またメーカーが機器状態をリアルタイムに把握できる体制が整っていれば、サポート部門からの初動対応が早くなるというメリットもある
■実際にパワコン全台交換してみると、発電量はどう変わるのか
太陽光発電において、パワコンの経年劣化が発電量に与える影響は見過ごせません。
今回、稼働開始から8~10年以上が経過したパワコンを稼働させている複数の発電所と、パワコンを全台交換してから数ヶ月間稼働させた発電所を対象に、実際の発電量データを収集・比較しました。
パワコンメーカー別 発電量の比較
Aforeパワコン (全台交換後) | A社パワコン | B社パワコン | C社パワコン | |
---|---|---|---|---|
3月 (3/18~3/31) | 5034.54 kWh (比較対象) | 5337.83 kWh (6%高い) | 5185.82 kWh (3%高い) | 5480.18 kWh (9%高い) |
4月 | 7389.97 kWh (比較対象) | 6606.78 kWh (11%低い) | 6481.13 kWh (12%低い) | 6762.67 kWh (8%低い) |
5月 | 6369.44 kWh (比較対象) | 5624.10 kWh (12%低い) | 5674.10 kWh (11%低い) | 5845.31 kWh (8%低い) |
6月 | 7256.45 kWh (比較対象) | 6546.26 kWh (10%低い) | 6547.85 kWh (10%低い) | 6853.05 kWh (6%低い) |
3~6月合計 | 26050.40 kWh (比較対象) | 24115.66 kWh (7%低い) | 23888.90 kWh (8%低い) | 24941.21 kWh (4%低下) |
比較条件の概要 千葉県にある比較的同じ気候条件で稼働している太陽光発電所のうち、パワコンメーカー3社が稼働する8~11年が経過する発電所の発電量の平均値と、交換したAfore社パワコンが稼働する発電所の2025年3月から6月までの発電量を比較。上記発電量は、3月以外は1ヶ月分の発電量を対象にしている。発電所により太陽光パネル容量が異なるため、パワコン交換した発電所のパネル容量62.4kWに合わせる形で各発電所の発電量を同一条件に調整して平均値を算出した。全発電所のパワコン出力合計は49.5kW。稼働年数が経っているパワコンが稼働する発電所は、A社:41発電所、B社:32発電所、C社:7発電所となっている。

上記の結果から、性能低下の度合いにはメーカー差も見られたが、いずれも年数の経過とともに確実に劣化傾向が認められました。
この結果からも分かるように、パワコンの更新は「故障してから」ではなく「発電量が低下する前」に実施することで、売電収益の最大化を図ることが可能です。
特に売電単価が高い期間を維持している案件においては、性能劣化に伴う売電損失を補う意味でも、計画的な更新の重要性は非常に高いと言えるでしょう。
どれくらい発電量が改善されるのかをシミュレーション
※ このシミュレーションは、入力した発電量と金額とパワコンから、最新のAfore社製パワコン(9.9kW)に全台交換したときにどれだけの発電アップが見込めるのかを表したものです。
ここで示される導入効果・経済効果は一例であり、内容を保証するものではありません。
■パワコン交換における機器選定の重要なポイント
パワコンを新しい機種へ変更する際には、電力会社への申請が必要となります。
交換するパワコンを選定する際には、既存設備との互換性を確保することが不可欠です。以下の要点を事前に確認しましょう。
- 電力方式の適合性
単相三線式か三相三線式かを確認し、電力供給方式と適合する機種を選定する - 出力制御対応および技術要件
電力会社が示す出力制御の必要条件を満たしているか確認 - 既存の太陽光パネルとの適合性
パネルの回路構成(直列、並列)、最大入力電圧、最大入力電流との相性を確認 - 設置環境と配線計画
設置スペースの確保、既存パワコンと同じ場所に設置できるか。既存配線との適合性を確認し、追加工事が必要か検討 - 遠隔監視システムとの連携
監視システム対応機種かどうかを確認。もし機種やサービスの変更が必要な場合はどのような機材が必要になるのかを確認 - メーカー保証とアフターサポート
保証期間や保守体制を確認。長期間安定して運用できる機種を選定 - 価格や導入コスト
交換時のコストだけでなく、運用コストも考慮して、トータルの費用対効果を検討
■東京電力におけるパワコン交換の手続き
- 申請場所
パワコンを更新する際には、東京電力パワーグリッドと東京電力エナジーパートナーのそれぞれに対して適切な申請が必要です。
低圧工事の申込み(東京電力パワーグリッド)
https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/fit/workshop.html
でんき工事コーナー ~低圧工事のお申込み~(東京電力エナジーパートナー)
https://www.tepco.co.jp/jiyuuka/work/low/index-j.html - Web申請で提出が必要な資料
・技術協議依頼票
・設置場所図(構内図、付近図)
・単線結線図
・漏電遮断機の仕様が分かる資料(単線結線図に記載されていれば省略可)
・パワコンに関する資料(認定証明書、整定値一覧表、試験成績書) など